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研究テーマ

生き物が生きていない物と大きく異なるのは、自律的に情報処理ができる点です。つまり、生物とは、情報処理ができるという、物質の特殊な物理状態のことであると考えても差し支えありません。

生物と非生物の間には、科学的に見ても大きなギャップがあります。

物質を扱う科学と情報を扱う科学が高度に発展した今、近い将来、生物のように情報処理ができる知的な物質を取り扱う方法が必要になります。しかし、これは、情報科学、生命科学、物理学などの古典的な学術の分け方だけでは取り扱うことができない総合的な課題であるため、新しい学術体系が必要になります。そこで、当研究室では、これらの分野の融合によって、生物のように知的な振る舞いをする物質を取り扱う新しい科学を開拓することを目指し、

(1) 物質を使った新しい計算原理に関する情報科学(2) 適応・進化する人工細胞の合成生物学(3) 自律的で知的なバイオソフトマターの物理学

に関する研究を行っています。新しい科学ですので、若い研究者や学生がアクティブに活躍できる楽しい分野です。

得られた成果は、化学エネルギーを情報処理に変換する微小な分子コンピュータや、適応・進化するナノロボットなどに関する、新たな原理の発見やシステムの実現へ応用されます。また「生命とは何か?」という根源的な問いに対して、物理や情報の立場から解明することにも貢献します。

物質を使った新しい計算原理に関する情報科学
計算機を使った新しい物質情報科学
(Physical and Chemical Computing & Molecular Intelligence)

生命システムは、自由エネルギー最小化の問題(最適化問題)を解いて平衡状態を実現したり、化学エネルギーの消費のある非平衡状態において自発パターンを形成したりしますが、これらの現象は、ある種の自律的な計算プロセスであるととらえることができます。このテーマでは、分子、粒子、流体、量子、生物などの物質系・物理系を使った新しい計算手法である「分子コンピューティング」の研究を進めています。また、人工知能技術を用いた分子実験の自動化のための実験アルゴリズム開発・システム開発の研究も進めています。これらにより、ナノサイズの分子コンピュータの開発や分子プログラミング手法など物質による知能情報システムの実現を目指します。
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適応・進化する人工細胞の合成生物学
(Synthetic Biology & Molecular Robotics)

私たち生命システムが非生命の物質からどのように創られているかを理解することは、生命科学だけでなく物質科学においても、未解明の重要な問いであることは間違いありません。そこで、生物の最小単位である細胞を模倣した原始細胞モデルや環境に適応し進化する人工細胞人工生命システムを構築することで、「生命とは何か?」を物理科学的に理解することや、あり得る生命を探求する非天然生物物理学の開拓を目指します。さらに、DNAナノテクノロジー(DNAゲル、DNAオリガミ)やマイクロ流体工学を駆使しして、細胞模倣型の分子ロボットを構築して体内で診断や治療などをできるシステムの構築も目指します。
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情報を制御する知的なソフトマターの物理学
(Biophysics & Living Soft Matter Physics)

エネルギー・物質・情報の出入りがある非平衡開放系における、情報ソフトマターの形成や階層的な自己組織化の方法を探求するとともに、電場等の外場による制御や、化学反応によるエネルギー代謝とのカップリングによる自律運動・集団輸送現象などのアクティブマターに関する研究を行っています。またそれらの知見を応用したマイクロマシンソフトロボットの開発も行っています。
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